Dancing Teahouse

2025
La Biennale Venezia
Architectura 2025
19th International Architecture exhibition

“T-an, the art of Utushi”

Photographer: Lloyd S. Lee

2025
第19回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
公募

An installation using scaffolding metal piping accompanied by a video that documents the collaborative process behind its conceptualization and creation.

The work is inspired by traditional Japanese architecture, which puts wooden houses on foundation stones without a firm connection so they hold their structure while moving during earthquake, just as if they were dancing.

In light of the research of architectural historian Hiroshi Emoto, the work also questions the authority and authenticity of traditional culture.

Video duration 00:32:21

Dancing Teahouse

待庵は千利休が設計したとされる現存する唯一の建造物である。2畳の空間に次の間、床の間がついたごく小さい茶室で、京都、山崎で1590年代に最初に建てられた後、妙喜庵に移設された。現在国宝に指定されており、徹底した保存管理のもと、立ち入りも厳しく制限されている。待庵は利休の思想を空間として体現する茶の湯文化における権威的アイコンであり、その壁から素材の一片を抜き取りお守りとすることで茶が上手くなるということを信じる者もいたそうだ。

待庵に対峙し中を覗き込むと、壁や天井の細かな仕掛けによってその小さな空間は無限に膨張していくようにも感じられ、またそこに居合わせただろう誰かの気配を想像すると息苦しいほどの圧迫感を感じる。壁から染み出すような歴史の重みと共に、疑いようのない本物性、迫力が満ちている。しかし研究を遡ると、移築や保全管理のためのメンテナンスなどにより、待庵のマテリアルや細部のデザインは時と共に変化しているそうだ。建築図面である「起こし図」からもその時々の棟梁により細部が違うことがわかる。また一方で、待庵は日本各地に「写し」と言われるレプリカが数多く存在する。それらにおいても、それぞれに細かなデザイン上のブレがあり、設置環境も屋外ではなく室内に建てられたりと大きく違っている。待庵という存在は、それ自体が圧倒的な迫力を持っているからこそ、逆説的に権威とはなんなのか、本物性とはなんなのかを問いかけてくる。

1978年の宮城県沖地震の経験から、昭和末期ごろより木造建築は建てるときに土台の上に柱をたて、その土台と基礎等を緊結して堅牢性を確保することが法令により義務化されていった。1995年に阪神淡路大震災が起こり、文化財建造物建築の耐震対策なども考えられる中、伝統工法において基礎を固定しないで建てられた建物が、地震と共に揺れることによって免震することができるのかを検証するために、2000年代初頭に待庵の写しを建てて振動台に乗せ振動させる実験(1)が行われた。振動実験用の待庵においては、妙喜庵の待庵にある次の間がなく、また本堂とも接続しない独立した2畳と床の間だけの空間となった。それは激しい揺れを受け、扉や障子などの建具は弾き飛ばされたが、本体には大きなダメージがなく、その柔軟さを明らかにした。

実験後、京都大学に移築された振動実験のための待庵は、撤去される計画が持ち上がったが、その話を聞いた数奇屋大工である簱がそれを譲り受け、自社において解体し、保管をしていた。建築家である宮内はそれを知り興味を持ち、その振動実験のための待庵を中心に据えた展示をベネチアビエンナーレで行う計画を立てた。

簱が組み立てる振動実験用待庵と、持田のインスタレーションをそれぞれベニスで展示することや、実験用待庵をベースとして持田の作品化することなど複数のプランが検討された。建築史家である江本と共に、実験用待庵について考察を重ね、持田は当初実験用待庵を自身の作品として再構築させることを目標にしていた。それらは「揺れ」という要素や、地震だけでない災害などの要素を重ね合わせ、その上で新たな形を探る方法を想定した。それによって、妙喜庵にある待庵のレプリカである実験用待庵を作品として本物化させることができると考えていた。しかし簱から実験用待庵の躯体に傷をつけることに対し強い反発があった。持田は簱とコミュニケーションをとることにより、振動実験用待庵の部材を再構成して作品化することへの理解を得ようと試みたが、逆に「簱の持つ待庵は、妙喜庵待庵のレプリカの一つではなく、振動実験に使われたという経緯も含めて簱にとって唯一無二の本物である」ことに気づかされ、簱の所有する部材を使って作品化することを取り下げた。映画監督である青山と共に、簱が振動実験用待庵の部材を倉庫から出し、洗い、整理し、仮組みをする様子を取材し、江本、宮内、そして持田自身へのインタビューとともにビデオ作品を作成した。それがきっかけとなり、その後簱は自身の活動として、振動実験用待庵を「T庵」として様々なロケーションで組み立ててそこで茶会をする活動をはじめた。

本プロジェクトにおける持田の作品としては、簱が他の大工から学んだという、木造建築が地震の揺れを受けた時の様子として、「石の上で踊る」という表現にフォーカスし、その踊りを抽出し足場用単管で表現したインスタレーションを「待庵の写しである振動実験用待庵の写し」として展開した。インスタレーションと共に展示されるビデオは、プロジェクトの経緯と、その中の葛藤を描き出している。

(1)国宝妙喜庵待庵の実物大モデルの振動台実験

基礎と柱とを緊結しない形式の伝統木造建築の耐震性状に関する実験的研究

西岡聡、森山敏行、西澤英和(日本建築学会構造系論文集 第608号、93-100 、2006年10 月)

SHAKING TABLE TESTS OF A FULL SIZE MODEL OF TAI−AN OF MYOUKI −AN IN KYOTO

Experimental study on seismic behavior of traditional wooden house whose base is not connected to foundation

Satoshi NISHIOKA, Toshiyuki MORIYAMA and and Hidekazu NISHIZAWA (J. Struct. Constr. Eng., AIJ, No.608, 93−100, Oct., 2006)

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Participants of the project “T-an, the art of Utushi”:
Tomohisa Miyauchi, Atsuko Mochida, Naoko Tamura, Kunimitsu Hata, Simone Shu-Yeng Chung

Collaborator of the work “Dancing Teahouse”:
Shinya Aoyama(Video Director), Hiroshi Emoto(Architectural Historian), Claudia Ortigas(Construction Manager in Venice), Mateo Ivan Eiletz(Construction Manager in Venice), Toya Maruyama(Construction Assistant for T-an), Fumitaka Kato(Camera Operator), Shu Akimoto(Musician), Alissa Osada-Phornsiri(Translator), Yukako Hashimoro(Subtitler)

Support:
Takashimaya Charitable Trust for Art and Culture
Nomura Foundation
The Obayashi Foundation

Special thanks to
Hidekazu Nishizawa
Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University
Kyoto Arts and Crafts University
Narushi Hosoda