第二期工事
第一期工事からさらに「解体」をすすめていくため、まずドローイングを行った。より壊れていくかたちに焦点を合わせた、屋根を大きく傾けるプランを竹原建材に提示し、そこからどのように実現させていくかのミーティングを重ねた。
ミーティングで主に焦点となったのはどうやって屋根を動かすかということだった。この家の屋根は、屋根としては特別重いものではないが、それでもこの重みで柱を押さえ、家を家として保たせている、その屋根を持ち上げようとすると、柱や、ひいては家全体が持ち上がってしまいかねないということだった。その話を受け、この建築における屋根の重要性を理解し、屋根を傾けて空間をつくることへの確信が強まった。
鉄構造を作り屋根の下に差し込み大きな重機で一気に持ち上げる案もあったが、そのような重機を現場に入れることが困難なのもあり、屋根を頂点で切って半分にしてから一枚づつワイヤーをかけて重機で持ち上げることにした。屋根を取ってから柱を斜めにカットし、そこに取った屋根を戻す算段だ。
方法が固まってからは、屋根を動かす部分の家をスケルトン状態にし、柱と屋根に補強を入れた。屋根を持ち上げた時に家全体が上がってしまわないための重しになってくれることを期待して、壁材など、家から出た廃棄物は家の中にまとめておいた。同時に、工事の重機を入れるために家の前の道の全面通行止の申請を進めた。通行止め予定の道路は愛宕町と南常盤町の2つのエリアにかかっているため、両方の自治会長にプロジェクトの説明をし、通行止めの許可をもらった。通行止めは平日5日間、9時〜17時とした。よって、重機の入る作業はこの期間に全て完了する予定となった。また、工事の前に、家の周りに足場と、飛散防止のためのシートを設置した。さらに、工事中に私と解体作業員の間をつなぐ役割として、長野県全域で主に美術施工を行う会社であるアルプから2名の作業員に来ていただくことにした。
工事はまず屋根を持ち上げるために、目視の邪魔になる手前の増築構造を壊すことから始めた。屋根が見えるようになってからワイヤーを屋根にかけ、それを重機で持ち上げて一枚ずつ屋根を外していった。
屋根を外した後は、屋根を戻したい位置に合わせて柱を切り、重しにしていた廃棄物の袋を吊り出し、また一枚ずつ屋根を戻して空間を作っていった。
重い屋根を戻していく作業はとても困難で、全てが計算通りいくわけではなく、とにかく置けた場所に置いて柱をたてて安定させるといった即興的なつくりかたになった。私の計画をベースにしながらも、解体のプロフェッショナルたちによって行われる自然な手つきや美意識によってどんどん形作られていく空間に、美術施工の専門家と少しづつ微調整をかけながら編集していくような作業であり、とてもスリリングで楽しい時間だった。
作業完了後は完全予約制での公開を行った。ツアー形式で、来場者にもヘルメットを着用してもらい家の中を探索しながら、作品制作のプロセスや見どころを話したり、感想や意見の交換をした。予約なしでも観れる一般公開日も設定し、たまたま通りがかった方にも作品の案内をした。
公開期間の後に、建物を全解体し更地にする第三期工事を行う。
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